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2018.06.18 骨太の方針2018の閣議決定を受けて(会長声明)


 6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」(いわゆる「骨太の方針2018」)では、私たち土地家屋調査士が関わる制度・事業を更に推進すべき旨の方針が示されました。

・「経済財政運営と改革の基本方針2018」
(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0615/agenda.html)

 この「骨太の方針2018」では、「人口減少時代に対応するための制度見直し(社会資本整備)」として、「空き家・空き地の流通・利活用」に向けた施策の実施・促進などが示されており(第3章4.(2)[62-63頁])、いわゆる所有者不明土地問題への対応はその一環として位置づけられています。

 所有者不明土地問題については、次の点に関する制度の改正の方向性を2018年度中までに提示し、2020年までの制度改正の実現を目指すとしています。

  • 土地の管理や利用に関し所有者が負うべき責務やその担保方策
  • 所有者が不明な場合を含めて地籍調査を円滑かつ迅速に進めるための措置
  • 相続等を登記に反映させる仕組み(相続登記の義務化など)
  • 所有者情報を円滑に把握する仕組み(登記簿と戸籍等とを連携される仕組みなど)
  • 土地を手放すための仕組み


 また、所有者不明土地問題の原因の一つとなっている「表題部所有者の氏名・住所が正常に記載されていない登記」(変則的な登記)の解消を図るために必要な措置を盛り込んだ法案を次期通常国会への提出を目指すことも示されています。さらに、「登記所備付地図の整備などの取組推進」、「遺言書保管制度の円滑な導入」、「住民票等の除票の保存期間の延長についての継続検討」が必要であることも示されています。

 これらの措置の実施によって、「所有者欄の記載が氏名のみで住所の記載がない」、「複数人の共有なのに、代表者の氏名のみが登記に記載されている」といった問題が解消に向けて動き始めることが期待されます。

 ところで、「表示に関する登記」を充実・整備させることは、「所有者不明土地問題の解消」だけでなく、市民の皆様の暮らしの安心を担保することにもつながります。「私の土地の面積はどれくらいなのか」、「私の土地はどのような形状をしているのか」といった物理的な状況が明確であることは、不動産の所有権を保全するための必要条件だからです。

 例えば、古くに取引された不動産は、取引された内容が登記に反映されていない場合も多く、子や孫の代になって隣地との間に境界に争いが生じてしまうこともあります。また、阪神淡路大震災・東日本大震災、最近では熊本地震のような大地震では、地殻変動や津波・建物の倒壊・火災といった事情によって、隣地との境界だけでなく土地の所在までもが分からなくなってしまうこともあります。これらの問題の予防や早期解決(早期復興)のためには、「表示に関する登記」の充実・整備は必要不可欠です。

 私たち土地家屋調査士は、不動産売買などの際に行われる「表示に関する登記」の申請代理業務だけでなく、市民の皆様の大切な財産である不動産の明確化を実現するために、多くの取組を行っています。

 国が行う地図整備事業への貢献は、境界に関するトラブルを予防するために非常に重要です。また、全国の土地家屋調査士会では、大規模災害発生時に生じる様々な問題解決に対応するためにそれぞれの自治体と防災協定を締結しています。さらに、万が一、隣地との間で境界をめぐってトラブルが生じてしまった際には、全国全ての土地家屋調査士会に設置されたADRセンターにご相談いただける体制を整えています。

 今回の「骨太の方針2018」では、「所有者不明土地問題」が契機となって「地図整備事業の推進の必要性」だけにとどまらず、「表示に関する登記」に関わる様々な制度を整備する措置が盛り込まれることになりました。「表示に関する登記」が社会を支える重要なインフラとして再認識されたことを、土地家屋調査士は、「表示に関する登記」の専門資格者として重く受け止めなければならないと感じています。

 私たち土地家屋調査士は、市民の皆様の暮らしの安心と安全のために、これまで以上に真摯に業務に取り組んで参ります。今後も、土地家屋調査士業務へのご理解とご協力をお願い申し上げます。

平成30年6月18日
日本土地家屋調査士会連合会
会長 岡田 潤一郎