栃木県土地家屋調査士会

① DVD版表示登記制度の変遷(栃木県版 ) 発刊事業

【目的】

地租改正から、現代までの表示登記制度の変遷については、連合会で編纂した「土地境界基本実務叢書」がありますが、栃木県に焦点を当てた画一的な資料集がありませんでした。そこで歴史的文献資料が散逸してしまわないうちに連合会編纂の「土地境界基本実務叢書」と併せて栃木県に焦点を当てた「表示登記制度の変遷 ( 栃木県版 ) 」を作成し会員を始めとした関係者に配布することにしました。

【経緯】

土地家屋調査士制度制定 70 周年記念事業の一環として「表示登記制度の変遷(栃木県版 )」を発刊したものですが、経済的・人的資源の観点から、単独の事業として行うことは適当でないため、このような記念事業を利用致しました。
平成 29年 10月 26 日に「70周年記念事業実行委員会第1回会議 」を開催し、第2 回からは 70周年記念事業常任委員会として4 名の常任委員と1 名のアドバイザー(会員・元総括表示登記専門官 )により編纂を開始したものです。
アドバイザー作成の要約冊子「表示登記制度の変遷について」をベースに、登記研究、土地境界基本実務叢書、栃木県文書館の文書等(布達集)を紐解き、2 年超の編集作業を経て「表示登記制度の変遷(栃木県版 )」が完成いたしました。
「表示登記制度の変遷(栃木県版 )」は DVD 版としましたので、第1 編 表示登記制度の変遷年譜表(栃木県版)の他、第2編 栃木県版地租改正資料(栃木県布達など )、第3編 宇都宮地方法務局土地建物実地調査要領の変遷、第4編 宇都宮地方法務局地図取り扱い要領(昭和 62年4月 )( デジタル復刻版 )、第5編 原始筆界認定のための資料(サンプル )、第6編 登記所の一元化期日と旧管轄変遷、第7編 栃木県史抜粋資料等、を収録することが出来ました。
配布の方法として媒体にDVDを選定したのは、経済的効果の他に 2次利用(会員が調査報告書・筆界調査委員意見書・筆界特定申請代理人意見書・筆界鑑定書などの作成において利活用できるものとする)を考慮したものです。

【 目指すもの】

土地家屋調査士を取り巻く環境は、一般業務においても専門家としての職責が一段と重要となり、併せて筆界特定制度、裁判外紛争解決制度 (ADR)等も一般社会に定着し、高度な土地家屋調査士の専門的能力や地域の慣習の習熟力が求められております。これらの能力を担保する一端として「表示登記制度の変遷(栃木県版)」の利用が望まれます。

【事業経過と結果】

表示登記制度の変遷(栃木県版 ) 」をDVD 版として会員及び関係する皆様(栃木県内の法務局・弁護士会・隣接法律専門職団体・友好団体、連合会・全国単位会)に配布致しました。
会員の中には、さっそくこれを利用して登記官との打ち合わせに使用したとの報告がありました。

② 足利学校 VR 事業・建物登記事業

【目的】

栃木県が誇る日本最古の学校であり国指定史跡である足利学校(足利学校事務所の意向に基づき、孔子像を安置した大成殿を対象の中心とした)を、ライカジオシステムズ社・神戸清光社の全面的なサポートにより3Dレーザースキャナー等を利用して調査測量を実施するものとしました。
災害等による上記建物の損傷の場合、このデータによりその復元を確実なものとするとともに、このデータを生かして、足利学校中で最古の建物である大成殿の表題登記を実施するものとしました。

【経緯】

日本土地家屋調査士会連合会は土地家屋調査士制度制定 70 周年に当たり、防災・減災の観点から、位置情報などを不動産登記に盛り込むことなどを研究するプロジェクトが進められています。
これに対応して栃木県土地家屋調査士会は、国指定史跡の足利学校を対象として、ライカジオシステムズ株式会社(3Dレーザースキャナー等機材の提供)、株式会社神戸清光(計測したデータの計算)及び株式会社エリジオン(VRゴーグルで体験できるアプリケーションの提供)との協働により 3 D データを取得するとともに、会員所有のドローン、トータルステーションによりデータを取得するものです。
これにより世界測地系のデータにまとめあげ、かつ V R 映像データの制作を行うことにしました。

【目指すもの】

不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務を専門とする土地家屋調査士はその技術・技量をより確実にしていくために、常に新しい技術を体得し有益な技術を取り入れていくことが必要です。
これにより社会的基礎基盤である地籍情報の構築に貢献し、安心で安全な暮らしを維持するために、土地家屋調査士の存在が有益であると国民から評価していただくことを目指します。

【事業経過と結果】

調査測量の実行部隊として栃木会内に登記制度創造プロジェクト事業実行委員会(及び栃木県青年土地家屋調査士会<青調会>メンバーを中心としたサポートチーム)を組成しました。
令和2年2 月に足利学校事務所(足利市教育委員会所管)を訪問し、調査士会が建物を調査測量し登記申請することを快諾いただきました。ただし大成殿の補修工事が実施中であるので調査測量は令和2年9 月以降に実施せざるをえないことがわかりました。
しかしながら足利学校事務所のご配慮により、令和2年7月9 日に当実行委員会は工事中の現場を拝見することができ、それをもとにして調査方法等を検討しました。
実地調査前に基準点を設定しておき、足利学校近傍の都市再生街区基準点を与点として基準点観測を実施し、令和 2 年9月 16 日午後、3D レーザースキャナー、ドローン及びトータルステーションを用いて調査測量を実施しました。併せて NHK・地元紙下野新聞社へ取材要請し、調査測量の経緯を NHK 宇都宮局にてテレビ放映され、下野新聞紙上にても掲載がなされ、多方面から好評を博することが出来ました。
令和2年 11 月中に3 D データの取りまとめが終わったので、これを用いて建物図面を試作することにしました。3D データを生かすことを考慮し、床面積求積については大成殿床面を基準として座標法で求積するとともに、各測点のZ座標をも敢えて記載することにしました。また建物の位置は、建物外壁と敷地境界線までの距離を記載する従来の方法に加えて、境界確定済みの筆界点を世界測地系で引照点として座標値を記載し、災害があったときの復元に寄与できるように配慮しました。この新たな試みによる建物図面は令和 2 年 1 月27 日に法務局の事前了解を得ることができましたので、早速登記申請し近日無事登記完了しました。また3Dデータから動画を編集作成し、建物表題登記の成果品とともに足利市に贈呈致しました。

(足利市教育長のご出席を得て贈呈式を令和3年30日に実施)

③ 土地家屋調査士制度制定70周年記念シンポジウム事業

【目的】

本事業は土地家屋調査士制度制定 70 周年記念事業である事から、栃木県土地家屋調査士会・栃木県公共嘱託登記土地家屋調査士協会・栃木県土地家屋調査士政治連盟の共催事業として企画しました。
誰もがいつかは直面する相続問題や大きな社会問題となっている所有者不明土地問題を俯瞰して、土地家屋調査士の業務内容を県民に広く周知することを目指します。
併せて、登記行政や法務行政を担う関連団体(法務局・公証センター・弁護士会・司法書士会)と連携して、上記諸問題解決に向けての情報提供や助言・提言を行うものとしました。

【経緯】

日本は超高齢化社会を迎え、今後も高齢化率は高くなると予想されています。医療や福祉における問題だけではなく、所有者不明土地問題が社会現象となっているように、不動産に関わる問題は益々深刻化しています。団塊世代の方が高齢者となり、「終活」という言葉が定着してきました。そこで、終活のメリットの1つとして遺産相続トラブルを回避できることに着目しました。不動産の終活、特に相続対策には土地家屋調査士だけの関わりでは限界があり、複数の専門家が相互に連携し、相乗的に支援策を提供する体制が重要であると考えたものです。

【目指すもの】

基調講演では、法制審議会「民法・不動産登記法部会」の構成員でもある國吉連合会長にご登壇いただき、土地家屋調査士についての紹介、相続登記促進に関する法改正案情報の提供を通じて、広く県民の皆様に「不動産の終活」に対する理解を深めていただくことを目指します。
パネルディスカッションでは、「終活に対する支援業務」について各専門家の視点から意見交換をし、今後の支援策や専門家同士の連携への契機となるよう目指します。

【事業経過と結果】

第1部 基調講演 「終活に対する土地家屋調査士の支援」
講師:日本土地家屋調査士会連合会 会長 國吉正和氏

第2部 パネルディスカッション
・コーディネータ:栃木県土地家屋調査士会 会長 橋本伸治氏
・パネリスト:
日本土地家屋調査士会連合会 会長 國吉正和氏
宇都宮地方法務局 首席登記官 杉山豊氏
宇都宮公証センター 公証人 山川景逸氏
栃木県弁護士会 弁護士 蓬田勝美氏
栃木県司法書士会 司法書士 蓬田勝美氏
栃木県土地家屋調査士会 土地家屋調査士 塩崎 晴美 氏

新型コロナウィルス感染症対策として、一般参加者の入場は行わず、担当役員他少数の関係者のみの入場としてビデオ収録を行い、会員研修会として利用すると同時に、今後一般県民や行政の皆様に向けてパンフレット等で告知した上で、 YouTube にて公開しています。
http://tochicho.or.jp/symposium/