福島県土地家屋調査士会

【目的】

登記創造プロジェクトに因み福島会では、福島県浜通り地方、とりわけ相馬市・南相馬市において江戸時代より実践されていた測量器械「量地三略に記載のある測量器を復元したもの」を用い当時の衣装に身を包み創造性を持って、測量の追体験( 5人一組 ) を行いました。同時に最新機器トータルステーション (自動追尾)を使い一人で量地三略と同じ大きさの地上絵 (星形) を描き作業時間と図形の正確さを確認しました。
土地家屋調査士業は、正確な測量技術があってこその業務だと認識しております。その技術を遠い昔の江戸時代に考案された器具を使って追体験することは、我々調査士にとっても意義あることだと考えました。

【経緯】

福島県浜通り地方、とりわけ相馬藩では、江戸時代より実践されていた 測量方法「量地三略」を基に、土地や家屋の調査測量・水害対策や用水路工 事を行いました。
「量地」とは「測量」のことであり、「三略」とは「3 つの測量器具を使 用してできる簡単な測量方天明 3~4 年 (1783~1784) の大凶作「天明の飢饉」のあと、二宮尊徳の教えにもとづき、「報徳仕法」

が行われました。これは、飢饉などで荒廃した農村を建て直す政策のことです。
1826 年、相馬市中村に「荒 至重 ( あらむねしげ )」は生まれました。15 歳のとき、相馬藩の命令で和算(日本の昔からの算数)を学び、19 歳になったときに江戸に出て勉強することになりました。その後、相馬藩から報徳仕法の実行担当の一員に任命され、このころに二宮尊徳と出会い、随身 ( 今 でいう秘書や助手)として働きました。
相馬藩に戻るとそれまでに習得してきた知識と技術を用いて多くの用水路やため池を作り、報徳仕法の成功に導きました。
このころ、相馬藩の多くの村で報徳仕法が実施されることになり、簡単に作って多くの人が使うことができる測量器具が必要になりました。そこで考え出した測量器具が「量地三略」に記載されている測量器械です。
量地三略の量地とは、器械や器具を使って土地(物)の高さ、深さ、長さを測って知ることです。三略とは「3つの測量器具を使用してできる簡単な測量方法」を意味しており、本書には測量に使用する「地経象限儀」、「地緯象限儀」、「地平半限儀」という測量器具についても書かれております。
「地経象限儀」とは、距離を測る器具です。川の幅を測る時等に使われました。また、土地の形を測って縮図を作るのにも活躍したと思われます。現代の機器はトータルステーションとなります。
「地緯象限儀」とは、高さを測る器具です。山や木の高さを測る時などに使ったようです。現代の機器はレベルとなります。

「地平半円儀」とは、坂道や水路の傾きを測るときに使われたようです。 また、二箇所の位置の高低差を測るのにも使用されたようです。 現代の機器はトータルステーションとなります。
この製作と使用が容易な測量器具を開発したのが、荒 至重(あらむねしげ)という相馬藩で士法係や代官を務めた人物です。
平成 29 年に当会会員が、量地三略に記してある地経象限儀・地緯象限儀・地平半円儀を復元しました。 当会ではこれらを用いた測量を行うことで、古くから社会の発展に寄与してきた測量技術の重要性を顧み、土地家屋調査士の専門性を広くアピールできると考えました。

【目指すもの】

東日本大震災の被災地県である当会では、平成 28年に「復興の一助にしたい」との思いから石川会と協力して、県内の小学生を対象とし た体験型授業形式による出前講座「地上絵プロジェク ト」を実施しました。翌年からは、 福島会の継続事業として校庭に大きな星の図形を児童と一緒に描いてきました。令和 2 年度は郡山支部が担当し実施する予定でしたが、新型コロナウィルスの影響により、翌スの影響により、翌年以降に延期となりました。今回は、復元された昔の測量器を使い昔の衣装の出で立ちで実施することにより作業の困難さ、当時の測量技術の正確さやスピード感などを体験するとともに最新測量器との比較をすることで測量技術の歴史と進化を感じ取り、緻密な測量の上に登記制度が成り立っていることを実感し、記録として残すこととしました。そして来年以降の継続事業としたいと考えております。

【事業経過と結果】

新型コロナウィルス感染症の影響もあり、小学校での出前授業は断念し、 本会の役員のみでの作業となってしまいました。
今回は、自動追尾トータルステーションと量地三略の測量器具のなかの地経象限儀を使用し、2 つの星の図形を描きました。
江戸時代の測量器具は、5 人での作業。現代の自動追尾トータルステーションは、1 人での作業と対照的な構図となりました。
今回、事業を行うにあたり、地元の新聞社にもあいさつ、宣伝に伺い、取材に来ていただきました。現地では、地経象限儀を複製した相双支部の濵名会員により丁寧な説明が行われました。そのため、記者の方に理解してもらうことができ、新聞記事 に細かく内容が書かれておりました。
人海戦術のため、測量時間には差がほとんどありませんでしたが、測量精度には差があり、時代の流れを感じることができました。
小学校で子供たちの前でできたのなら、非常に面白く、宣伝効果も高いものであったと思います。

【登記制度について創造されたもの】

過去から受け継がれてきた測量方法と、器械の進化に伴う測量技術・精度の向上が、現在の登記制度の根幹と成すものであることを改めて認識しました。今後のさらなる技術進歩及び電子化との連動一元化を促進することにより、世界における不動産公示方法の統一化に、土地家屋調査士が寄与し、日本の不動産公示方法の紹介に寄与できる日がくる未来が創造されると考えます。

【創造されたものを活かすには】

登記制度を取り入れている国は少ないが、ドローンや人工衛星を駆使し国境を越え相互技術乗り入れの可能性があります。近年の地球規模での異常気象による大規模災害時及びその後の対応において正確な地図と登記があれば、現地での復元作業並びに所有者確認作業が比較的容易に進められるのではないかと思います。そのためには日本の地図作成作業技術、登記制度の研究・輸出が欠かせないものと考えます。