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平成17年10月23日

 

土地家屋調査士(ADR)特別研修の実施について

『民間紛争解決手続代理関係業務』を行うことができる土地家屋調査士として

認定を受けるための研修

 

日本土地家屋調査士会連合会

 

一、はじめに

ここ数年、法曹関係者、隣接法律専門職にある資格者及びその団体にとってもっとも大きな関心事であった司法制度改革は、昨年11月に政府に置かれた司法制度改革推進本部の設置期限到来を以って一応のとりまとめが行われ、分野別検討会の夫々によって答申された改革項目の多くが法科大学院の制度、裁判員の制度、司法支援ネット構想等々として法制化が進められています。

その中で日調連が各単位会、全調政連等とともに大きな運動として取り組んできたのが裁判外で紛争を解決するという、いわゆるADRへの取り組みでした。

規制緩和、規制改革等の議論では、資格者間の相互乗り入れ、各種の規制の緩和、乃至は撤廃、更には当該資格の社会的有用性を考慮して制度の存否さえも俎上に上ってきました。

そういった潮流の中で、各資格者は生き残りをかけて様々な取り組みをしていますが、日調連ではADRへの取り組みを大きな柱としてきました。

土地家屋調査士がその専門分野である「土地境界の紛争解決」のために、その専門性を活かして「社会に貢献」すること、その過程で更にその知識経験を深め、高めることこそが、専門資格者としての土地家屋調査士の将来を開く大きな橋頭堡になると考えたからです。

 

関係者の多くの努力が実を結んで、昨年11月に成立した「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(所謂「ADR基本法」)においては、ADRの手続実施者として隣接法律専門職種の活用、更に、11月26日付け司法制度改革推進本部決定では、私どもの念願していた民間紛争解決手続機関における代理権が土地家屋調査士に付与されることが決定されました。

民間ADRにおける代理権付与に当たっては、紛争解決のための代理業務という、これまでの土地家屋調査士の業務とは異なった側面を持つ分野への参画であることから、代理人として活動する権限を付与されるためにはいくつかの条件が付されています。

その一つが『代理人として活動するに必要な能力担保』のための特別研修の実施です。

二、土地家屋調査士法の改正(第162回国会)

162回国会では、法務省の提案による土地の筆界特定の制度創設に関する不動産登記法の改正法案とともに土地家屋調査士法の一部改正法案が上程され、去る4月6日の参議院本会議で可決成立し、4月13日、平成17年法律第29号として公布されたところです。

 

土地家屋調査士法改正の主たる内容は、

1.法務局が行う筆界特定制度の創設に伴い、土地家屋調査士が筆界調査委員になるための欠格事由の規定新設と、筆界特定手続の代理業務を行うことが出来ることに伴う法整備。

2.一定の条件をクリアした土地家屋調査士は、民間紛争解決手続機関(ADR)における代理人となることができること、代理人として受任する前であっても、相談を受けることができること及びその権能を付与されるために必要な条件等についての規定の新設。

3.その他、守秘義務規定の新設、相談業務の明文化及び第68条の規定の整備等です。

 

1の筆界特定制度の代理に関しては、土地家屋調査士は第3条に定める独占業務として、特段の法定研修等は必要とされず、単独受任ができることとなっています。

2の民間紛争解決手続機関における紛争解決手続の代理業務については、改正調査士法第3条の各項・各号の規定により

1)土地境界の不明を原因とする民事紛争の解決のための代理であること。

2)法務大臣の指定した民間紛争解決手続機関における代理業務であること。

3)法務大臣の指定した研修機関における能力担保のための研修を修了すること。

4)前記研修修了後、法務大臣の認定を受けること。

5)ADR代理業務については、同一の事件について弁護士が受任していること。

(弁護士との共同受任)

6)土地家屋調査士会の会員であること。

等です。

 

三、民間ADR代理関係業務を行うについての条件

上記二の2に掲げた条件は、司法制度改革推進本部11月26日決定により、土地家屋調査士については、『@信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、A土地の境界が明らかでないことを原因とする民事に関する紛争(B弁護士が同一の依頼者から裁判外紛争解決手続の代理を受任しているものに限る)に係るC裁判外紛争解決手続(D法務大臣が指定する団体が行うものに限る。)について、代理することを土地家屋調査士の業務に加える。』と明らかにされています。

上記二の2で説明した(1)については、土地家屋調査士が代理業務を行うことができる紛争の対象として、『土地の境界が不明であることを原因とする民事紛争』とされています。司法制度改革における隣接法律専門職種の活用は、国家資格者等のそれぞれの分野における専門性、知識、経験を紛争の解決のための手続きに活用することによって、迅速な解決、適正な解決を促し、国民の利便に供することにあったからです。

日調連では、土地家屋調査士が民間ADRでの活動を通して社会に貢献できる対象、そのことによって土地家屋調査士が誇れる職業人として社会的に位置付けられることにつながるものとして日常業務の中核でもある土地境界に関する問題を取り上げ、既に試行を開始している境界問題相談センターの対象分野として『土地境界の不明を直接、間接の原因とする紛争の解決』に特化してきた経過があります。

二の2で説明した(3)及び(4)については、『信頼性の高い能力担保措置を講じた上で』の具体化であり、代理を行うことができる者として認定されるための最も重要な要件である、今般ご案内する「土地家屋調査士 特別研修」であります。

土地家屋調査士は制度創設以来55年にわたって、『表示に関する登記に必要な調査・測量及び申請手続を所有者に代わって行う』ことを業務としており、所有者本人が自ら調査・測量・申請手続を行うには困難が伴うことから、『代理』という制度が設けられ、その中で業務をして参りました。

今回付与される『民事紛争の解決のために当事者を代理すること』は、高度な倫理観、調査士法第23条とADRにおける代理業務の実務との関係、民事訴訟制度に関する知識、財産権や裁判を受ける権利といった憲法上の国民の権利義務の理解、代理人として行った行為の効果の帰属、等々に関する高度な知識と素養が求められることになります。

そのために必要な能力を培うため、司法制度改革推進本部決定では『信頼性の高い能力担保措置を講じること』が条件とされたものです。

二の2で説明した(5)については、弁護士との共同受任が土地家屋調査士の代理人となることができる場面の条件とされていたものに対応する規定です。共同受任のあり方等について、今後、法務省、日本弁護士連合会とも協議を重ねることを予定しています。

 

四、土地家屋調査士(ADR)特別研修

土地家屋調査士が民間ADRにおける代理権を付与されるに必要な条件の中核として、この『民間紛争解決手続代理関係業務』を行うことができる土地家屋調査士として、認定を受けるための研修が必要となります。

しかし、この研修とそれに続く『法務大臣の認定』は、単に境界問題相談センターにおける代理人となることに止まらず、

@将来の法務大臣による指定団体の拡大への対応

A平成14年の調査士法改正の国会での質疑及び附帯決議で土地家屋調査士の将来の司法制度への参画要望に応えて、『土地家屋調査士の相応の実績と社会的ニーズを踏まえて』例えば、専門分野における訴訟の代理人、あるいは出廷陳述権を付与することを将来の課題として検討する・・・とされたことの実現のためにも実績を積む場として、紛争解決の分野における社会的ニーズを掘り起こすことができること、

B法律に規定された公正な機関による研修を受け、法務大臣が認定するという、フィルターを通して、専門分野の知識経験はもとより、紛争の解決能力、倫理観を兼ね備えた高度な専門資格者であることを証明することができることにもなり、個々の土地家屋調査士の信頼度をより高めることができる。

等々によって、土地家屋調査士制度と業務の将来展望にとって大きな一歩となるものと考えているところです。

民間ADR(境界問題相談センター等)における代理人となるために必要な研修ですが、筆界特定制度においても紛争性のある事案を取り扱うことが予想されますので、この研修の課程を修了することは、筆界特定制度における代理人としても有益な研修であります。

 

会員におかれましては、この『土地家屋調査士 特別研修』の趣旨をご理解いただき、一人でも多くの会員諸兄姉がこの制度を活かし、民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる者として法務大臣の認定を受けた土地家屋調査士として活動することを期待するものです。

 

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